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【圃場見学会レポート】

秦野 山ぎわの有機農業

 4月1日、約30名で秦野市の遊亀農園(服部さん)、エコ野菜テン照ファームHADANO(大野さん)、ファームこうぼう(山崎さん)、やまやま農園(杉本さん)の畑を見学しました。

 遊亀農園(服部さん)

服部さんの畑は、上公民館近くの南向き斜面の段々畑です。眺めがよく「いいなあ〜」という声が参加者のあちこちから上がっていました。1枚が約1反で、4段とすぐ近くに1.5反の約5反で、いろいろな経緯もありましたが1か所にまとまったため作業がだいぶしやすくなったそうです。堆肥舎や物置は自分で建てたそうです。いま畑にある作物は、小麦(農林61号)、アーティチョーク、キャベツ、そらまめ、にら、など。

服部さんとシカよけ柵
服部さんとシカよけ柵
畑からの眺め
畑からの眺め

 とくに寒冷紗とべたがけとネットのあいのこのような「キャベツの霜よけにかけている資材は何??」と参加者から質問が出ましたが、「日石(にっせき)ワリフ」という資材だそうです。

霜よけしてあるキャベツ
霜よけしてあるキャベツ
日石ワリフ
日石ワリフ

 畑の周りにはシカよけの柵が張ってあります。イノシシはいませんが、シカはよくいるそうで、動物対策がすごく大変とのことでした。それと、一段一段が平らのようでいて傾斜があるため長時間同じ姿勢でいると疲れること、また、雨で土が流れてしまうことがあり畦の高さに工夫が必要とのことでした。段々畑なので土手の草刈が大変なこと、一方で草をマルチにしたり、残渣と一緒に段ごとに積んでおいて堆肥の材料に利用したりできるとのことでした。

段々畑の土手部分
段々畑の土手部分
平らのようで傾斜のある畑
平らのようで傾斜のある畑

 これまで堆肥の量が少なかった、との反省から、堆肥を3t/反入れたら野菜の出来がだいぶ良くなったとのことでした。開成町の剪定チップを紹介してもらい購入していましたが、今後はもう少し高くしたいとのこと。そうなると再検討かなあ、とのことでした。堆肥の材料は、馬糞・剪定チップ、米ぬか、おからを利用しているそうです。

遊亀農園の堆肥
遊亀農園の堆肥
えんどうまめ生育中
えんどうまめ生育中

 エコ野菜テン照ファームHADANO(大野さん)

 2箇所目は場所を移動して、大野さんの堀西の畑を見学しました。はだの市民農業塾を卒業して4年目、約1反の畑は農業公社を通して借りているそうです。ニンニクなど出荷することもありますが、出荷が目的ではないため、農法は自然農を基本として、炭素循環農法や土ごと発酵、不耕起、など。炭素循環農法は、炭素比の高い有機物を表層5cm位で土と混ぜることで、微生物のえさにする。またジャガイモを植える時には切り口を上下どちらにするか、株間をどれくらいにするか、ネギのスポット式(定植法)など、とにかくいろいろなものを試してみているとのことでした。

大野さんと畑
大野さんと畑
竹皮があちこちに敷いてある
竹皮があちこちに敷いてある

 畑には、植えたばかりのジャガイモ、にんにく、たまねぎ、きゃべつ、にんじん、ダイコンなど。秦野の竹細工屋さんから竹の皮をたくさんもらうそうで、株元に竹の皮がたくさん敷いてあったり、通路に竹の切れ端がそのまま敷いてあったり、参加者みな興味津々で見学していました。栽培する作物の選択は米国の国立ガン研究所の「デザイナーフーズ計画」が示すがん抑制効果の高いもので、にんにくの作付が多いのはそのためとのこと。

 自然農は草が作物を作る、とのことで、大野さんの実感としては、草と作物で養分の奪い合いはないが、光の奪い合いはあるようだと感じること、そのため、草の根は残して上だけ刈るということはしているそうです。最初のころよりも「自然農だけでは出荷できるような野菜は難しいので『メシを食っていくこと』は無理だなあ」と思うようになったそうです。ただ自然農の野菜は置いておけば出荷はできないが食べられる、大野さんの場合は出荷が目的でないので今のようなやり方がちょうどいいとのことでした。(一部の参加者からは「これだけできていれば十分出荷対象ですね」との声もありましたが。)

そらまめ、にんにく他
そらまめ、にんにく他
収穫した野菜たち
収穫した野菜たち

 ファームこうぼう(山崎さん)

 山崎さんの畑は計3.6反で2箇所に分かれていますが、今回はナスやキュウリなどを主に栽培している堀西地区の2反の畑を見学しました。山崎さんの栽培法はいわゆる慣行農法に近い形で、米ぬか・牛糞堆肥をまいて耕耘し、鶏糞・油かすを元肥、あとはぼかしで品目により調整していくという方法をとっているとのことです。

山崎さん
山崎さん
ソルゴーを鋤きこんだ畑
ソルゴーを鋤きこんだ畑

 今回見学した畑はとても風が強いそうで、ナスとキュウリを栽培した際には周りに風よけのソルゴーを植え、それを粉砕して鋤き込んだのが現在の状態とのことでした。この畑は一昨年まで遊亀農園の服部さんが耕作していた畑で、地力が比較的少なく昨年ナスの初期生育が不良だったとのこと。作物の生育に使われる養分は前年までに土に蓄えられたものが50%くらいではないか、と土作りの重要性を感じたそうです。ナスとキュウリは交互作にしているので、キュウリは自根の苗を育苗、ナスは近隣の農家から接ぎ木苗を購入しているとのことです。

 現在畑にあるのはニンニク、わけぎ、タマネギ、らっきょう、コマツナ菜花。ニンニクやタマネギなどは畑の奥の方に植えてあり、これはシカ対策も兼ねているとのことです。

 また、ぼかしの中でも納豆ぼかしやヨーグルトぼかしは雑誌『現代農業』を見て作っているそうで、10〜15kgの米ぬかの中になかに納豆1パックあるいはヨーグルト1パックを水に溶いて混ぜたあと表面を毛布などで覆っておき、切返して作るとのこと。納豆ぼかしの散布は、肥料としてだけでなくキュウリのうどんこ病の予防あるいは抑制にも効果があったようだ、とのことでした。よもぎ発酵液も『現代農業』を見て作っていて、効いている感じはするそうです。

小松菜のなばな
小松菜のなばな
山の近くはニンニク(シカ対策)
山の近くはニンニク(シカ対策)

 やまやま農園(杉本さん)

 昨年3月に就農した杉本さんの畑は、堀西地区の山崎さんの畑の並びに4枚、少し離れた堀山下地区に2枚、計約37aあります。就農して1年ということで、まだいろいろ模索中とのことでした。肥料は発酵鶏糞を近所の養鶏農家から購入しているほか、乳酸発酵液肥を薄めて使っているとのことです。乳酸発酵液肥は、妻の美佳子さんが詳しいそうですが、米のとぎ汁を焼酎のペットボトルに貯めておき、みそや納豆を少量入れて1週間ほど日に当てないでおいたものを10〜100倍に希釈して追肥用の液肥として用いるとのこと。

 緑肥としては、イタリアンライグラスを昨年秋に播種をしてみたとのことです。「キャベツと混植すると虫がつかない」ということで始めたものの、キャベツがうまくいかなかったため、緑肥の効果があるかどうかはこれから様子を見ていきたいとのことでした。

杉本さんとたまねぎ
杉本さんとたまねぎ
ヨトウムシが多く大変な畑
ヨトウムシが多く大変な畑

 最初に見学した畑は、植えたばかりのじゃがいも、生育中のカラシナ、そしてニンジンを片付けたあと。その隣の畑はタマネギで、隣の山崎さんの畑同様風が強く、2月頃にビニルマルチがはがれてしまったので鶏糞マルチのようにしてみたこと、そのため畑の表面に白いものが見えるが、それは鶏糞中に混じったえさのかき殻。そのほか、のらぼう、紅菜苔、白菜の花、さやえんどう、ネギ苗などを見せていただきました。畑の中にヨトウムシが多いところがあり、マメやネギなどはだいぶ苦労しているそうです。

 この畑には育苗ハウスも建ててあり、現在春から夏に収穫予定の野菜を育苗中でした。震災の影響で落ち葉に付着している放射性物質が心配なため、今年は温床の作成をあきらめ、震災前の牛糞・米ぬか・油かすを積んだもので発芽時の温度だけを確保し、その後はハウスで温床なしで育苗をしているとのことでした。育苗用の床土は、牛糞堆肥をねかせたものとバットグアノ、赤土を混ぜて使っているとのことでした。

 地域で鶏糞が品薄状態だということ、また羊飼いの知人の方が休業するということで、羊を飼い始めたとのこと。1頭だとさみしがるということで、サフォークの雌が1頭と、品種不明の雄が1頭。羊を飼っている堀山下の畑はあまり広くないこともあり、現在少しずついろいろなものを作っている状態で、今後若干使い方を変えようというところ。参加者も羊に会えて大喜び、羊もたくさんの人に会えてちょっぴり興奮?というところで、圃場見学は終了しました。

羊のいる堀山下の畑
羊のいる堀山下の畑
羊たち
羊たち

 圃場をまわった後、上公民館にて質疑応答や意見交換を行いました。

  • Q:水やりはどうしているか
  •  A:苗の水は自宅から持って行っている。他の人も沢の水をポンプでくみ上げて運んだりして、苦労しているようだ。(服部さん)

  • Q:直売だと話ができるが、宅配だと会えてもあまり話ができずもどかしく感じているが、どうしているか?
  •  A:月1回は便りを入れているが、お客さんが少ないし、もともと喋る性格ではないのであまり気にしていない。(服部さん) →渋沢39ネットミニ朝市で、いろいろ話すようにしている。(山崎さん)
  • Q:廃菌床のかたまりはどうやって撒くのか?
  •  A:一度野積みにしてぼろぼろになってから撒く。ただ、最近は廃菌床自体あまり使っていない。(服部さん)
  • Q:保育園への出荷はどのようにしているか?
  •  A:1軒は給食の食材として「人参だけ○kg」とか。どんな野菜を出荷できそうか、献立をたてる前に相談がある。多く買ってもらえるので、大変だが野菜が余り気味の時にはとても助かる。形やサイズは特に指定はないが一応気は使っている。値段は生産者で決めさせてもらっているが、業者よりは高いようで「勉強してね」とは言われる。もう1軒は、正式には決まっていないが、保護者の方がセット野菜を買ってくださっているところ。(服部さん)
  • Q:放射性物質についての対策は? 炭素循環農法的に何か対策はあるか?
  •  A:堀場製作所の線量計(radi)で表面線量を計ることと、たまに藤沢の測定所でベクレルを計っている。野菜からは不検出(10Bq以下くらい)、小麦が14か17Bqくらい。炭素循環農法的には特にないが、炭素循環農法のホームページが更新されているようなので見てみるとよいのではないか。(服部さん)
  • Q:これからの目標は?
  •  A:リンゴの木村秋則さんのDVDを見たので、試してみたい。種取りはこれから。(服部さん)
  • Q:固定種でおすすめのものはあるか?
  •  A:「大芹(おおせり)賀茂なす」は美味しいのでおすすめ。(杉本さん)
  • Q:生産管理・直売等、一人でやっているようだけれども、援農の受け入れなどは考えているか?トラクタをはめたときなど、一人ではどうしようもない状況になった場合などはどうしているか?
  •  A:隣が「はだの有機クラブ」なので、ハウスビニルを張るときに手伝ってもらったり、機械を貸してもらったりはしている。ただ、モチベーション的に、一人より誰か居た方がいいとは思う。援農は受け入れたいと思っている。(服部さん)

 ※とくに援農の受け入れについては、参加者のなかでも悩みや試行錯誤があるようでいろいろな情報交換・意見交換がなされました。

  • 有機野菜を食べたい人と、農作業をしたい・手伝いたい人は別のような気がする。
  • 会員制農場で「手伝いお願いします」ということで入会してもらうので、一次産業がひどい状態であることを見せている。農業の応援団が外にいてくれるととても助かる。普通のところで有機野菜を売りたいし、関心のある企業の社長さんなどを巻き込んで地域通貨やクーポンという形で何かできれば、ビジネスとしても成り立つのではないだろうか。
  • 農家の方で食事を用意することが家族の負担にもなってしまい、いちばん大変。
  • 家と畑が離れているので弁当持参でお願いする。余剰野菜をお土産に持って帰ってもらう。
  • どうしても作業の内容によって、援農の方に来てほしい時と来てほしくない時ができてしまう。ボラバイトとなると、それはそれで難しいことがある。
  • 援農の方や研修生に対して、万が一の時の保険をどうするかは悩ましい。
  • 自分は援農している方なので、「ボランティア」という意識の問題だと思う。弁当持参は当たり前だし、保険も自分でかけるのが、本当のボランティアではないだろうか。
  • 現状ではいろいろな人がいて、それぞれに農家が対応していくうちに、対応に疲れてしまった農家が援農の受け入れ自体をやめてしまう。草取りが続く人は、援農も長続きしてくれるようだ。

 質疑応答、意見交換は時間いっぱいまで続き、4つの農場見学とともに、盛りだくさんの一日になりました。里山の春のにぎわいと、海まで見える素晴らしい景色を胸に、また今年も頑張ろうと思えた圃場見学会でした。ありがとうございました。


(2012.4.6 天野)